FUJIMURA
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月刊「フォトコン」連載撮り下ろし企画(7月号)

月刊「フォトコン」連載撮り下ろし企画(7月号)

7月号「感情」

〈解釈〉
表現者である以上、作品には意味が含まれていなければならないと考る。一見感情とは抽象的で大きなテーマに思えるが、最も重要で写真に必要な要素であるとも思う。感情とは心が動く事で、即ち感動でもある。

〈思考〉
有名な場所には理由があり、興味を惹く原因がある。この靴の像はホロコーストの象徴だ。世界の歴史上、最も悲惨な歴史と言っても過言ではない大事件の象徴を、その舞台となった場所で歴史を感じさせようとした。

〈表現〉
美しきドナウ川が血に染まった歴史。美しく見える夜の光は、虐殺された人々の魂にも見える。ここでは無数の命が無下に消され、肉体は流され貴重品だと靴は残された。そんな歴史を夜景で表現した。

〈ストーリー〉
 美しい夜景は癒される。多くの人はその魅力に陶酔する。自分も昔はそうだった。その美しい風景を見た目のまま写真に写そうと技術を磨いた。
 若い頃はアーカイブ的なラインナップが作品の価値と信じ、世界を廻る“数”に拘った。500都市を超える取材で気付いたのはその土地にある歴史や風土。そこに本来の美しさがあると言う事。世界史を肌で感じられるのは、この仕事の良い面だろう。
 ここでは数千人のユダヤ人が老若男女を問わず虐殺された。“死者の靴”には10センチ程しかない子供用の靴もある。子を持つ親として何ともやり切れない。悲しいが似たような事件は世界史の中に度々現れる。天災や疫病と違い意図的に行われた虐殺。人はこれほど愚かだったのか。
 街の灯りが鎮魂の灯火となるよう、祈りを込めてシャッターを切った。

LUMIX DC-S1R
LUMIX S 24-105mmF4
F7.1 4秒 ISO100